2 - 生と詩(2019)


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The Salovers古舘佑太郎率いる新たなバンド"2"の3枚目のアルバム。サラバーズの印象はフロントマンの存在感はあるものの曲がイマイチって感じだったが、その弱点を元ポニーテールスクライムの才能豊かなコンポーザー加藤綾太を作曲者に据えたことで補ったのがこの2というバンド…という認識。つまり"フロントマンに華があって声が良くて歌詞がよくて更に曲も良かったらそれもう完璧じゃね?"っていう単純ながら非常にロジカルな造りのバンドだと思う。

本作は古舘佑太郎のパーソナルな部分が表出した内容になっていると本人らも語っているが、人が作った曲によくこんな腐った歌詞乗せれるなというのが正直な感想w。業が深いよなぁ。個人的には前作のgo 2 the new worldとかのが希望に満ちてて好き。ホメオパシーではその希望の正に裏側を歌っていて、ぶっちゃけgo 2 the new worldがもっと売れたら良かったんだけど、その停滞感さえ歌ってしまう正直さは信用できる。

曲は東狂がめちゃくちゃ良い。この曲のために9曲目まで黙って聴くみたいなとこあります。でも曲短いなって思うから演奏もっと粘って欲しい。あとやっぱフォーピースはシングルなだけあって良い。

すごい勢いで3枚アルバムリリースしてきたけど、今の彼らは目的意識が強過ぎて音楽の"楽"の部分に欠けているというような印象を受けた。今の日本の市場では色んなテーマの楽曲が揃った色彩豊かな作品が求められるのかもしれないが、個人的にはもっとフォーカス絞った作品が聴きたい。しかし、本気でやってたバンドが終わって、その次にやるバンドは楽したいという気持ちが出てきてもおかしくないのに前と同じくらいの情熱をかけて打ち込んでいるのは単純に凄いと思う。応援したくなる。まだまだやってくれると信じてる。

高野文子 ー ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事(1987)

高野文子5冊目となる単行本。やっぱ天才。この自由自在の視点と細部までよく構築された空間。話もよくできてる(内容は小粋な映画っぽい雰囲気で年に1回は見たくなるなるようなやつ)。本当どうやってここまでデッサンみたく細かい描写が描けるのか謎、ため息が出る。今作は特に光と影の表現、その凝り方がヤバい。シンプルなトーンとベタなんだけどそれが潔く自然でオシャレで可愛い、漫画における色彩感覚がずば抜けてる。ふざけてるかと思えば演出だけでシリアスにカッ飛べるその技量も圧巻。そして、舞台となるデパートは本当によくデザインされており、まるで建築デザイナーの制作意図まで汲み取れるようで、何度でも繰り返し読みたくなる箱庭を作り出すことに成功している。……その代わり個性的なキャラクターデザインが出てこないのが高野文子の弱点であるのかな。あけすけに言えば、ありきたりな物の寄せ集めで(その描写の深さがすごいんだけど)新しい物をデザインする事ができていないと思った。まぁそれだけが漫画じゃないけどねぇ。

clematis - あしたには(2019)


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東京のインディーバンド1stミニアルバム。コードと歌のオーソドックスなバンドサウンド。ダレ気味のコードに浮遊感漂うメロディが乗り気持ちいい。 浮遊感はあるがフィッシュマンズほど浮世離れし過ぎない感じ。歌詞にメッセージ性が感じられず、別になんにも期待してない「我、関せず」って感じのスタンスはゆとり世代以降の世代感なのかもしれない。サビでグランジ風のクランチギターになるんだけど、そこにシンセ風のキラキラしたギターが乗るのが90sグランジとの相違点。そういう清濁混ざり合うのって有り得なかったから(ジャケットにもその感はあります。ロックでここまで清涼感あっていいの?っていう)、そこまで自虐的に被害者面して必死になるのとか、今の子にとってはダサかったりするのかな。コードとメロディそして声の良さが最近のバンドでは頭一つ抜けてると思った。 アルバムとしては食い足りない感じがします。これからが楽しみですね。

高野文子 - 黄色い本 ジャック・チボーという名の友人(2002)

前作「棒がいっぽん」を立ち読みしてこりゃスゲエと思って手に取った一冊。前作と比べて絵が手抜き…というかラフになってて何を描いてんのか把握しづらい。しかもこの人の漫画は内容も型にはまってないしアングルもかなり凝っているので読者にかなりの理解力が求められる(その点はずっと変わらない)。アングルについて語るが、まずこの人は空間把握能力がすごい。この人の頭ん中には確かに部屋の内装があるし、だからそれをデフォルメして描く事もできる。だからディテールは薄味でも深みは失われていない。これは手抜きっていうよりそういうデザインだという他ない。その能力があるからこそあらゆるアングルで人物を配置し描く事ができる。これによって普通では描かれない繊細な所まで表現が可能になっている。(これで絵を書き込み過ぎれば、内容から読者の目は逸れてしまうかもしれない。)描かれているのはなんの変哲もない日常なのだがそれがとても面白い。漫画とは作者の感性と視点を完璧に読者にトレースして好きな景色を見せることが出来る魔法のツールなのかもしれない…そう思わされた。天才です。

収録作品は黄色い本ージャック・チボーという名の友人ー、CLOUDY WEDNESDAY、マヨネーズ、二の二の六、の4本。

黄色い本〜は東北あたりの寒いとこに住む本が好きな女学生の話。時代背景は多分昭和だな。その辺は作者の実体験基づいてるところもあるかもしれない。過激な描写が全くなくて緩慢にならず叙情性に満ちてるなんて凄いですよ。ハッキリいって絵は全く可愛くないんだけど(作者も可愛く書く気ない)それがめっちゃ可愛いの。愛着が湧く。作者の類稀なる観察力から繰り出される自然な仕草や表情によるところだろう。幸せってのは普段の行い、周囲の人の愛情、信念を持つこと、そんなものから形どられていくんだなって感じた。感動した。

CLOUDY WEDNESDAYは雑誌の企画で他作家の漫画を再度作品化するという変わった作品で、元は冬野さほという人の作品。この作品も日常を描いたものだが、そこから更にメッセージ性すら省いて、ひたすら可愛らしい人の営みが得意の凄アングルによって堪能できる美しい作品。

マヨネーズはOLの日常かな。この作品は、かなり難しい。いや、多分わかる人にはすっと理解できるものだと思うけど主人公の感情がどこでどうなって最終的にああなったのかがよく分かんない。これは相手の男性がよく分かんない対象として描かれているが、僕は男性なので寧ろ主人公の女性の気持ちが分かんないっていうのが面白いところ。分かんないだけに気になるそんな作品。

ニのニの六はホームヘルパーさんのお話し。これは事件性のある作品で逆にわかりやすくかなり笑えました。

…以上バラエティに富んでいて素晴らしい一冊でした。

仮面ライダー響鬼(前半)(2005)

仮面ライダー剣の次にやってたTVシリーズ。本作は『仮面ライダークウガ』から4年ぶりに現場復帰した髙寺成紀がプロデューサーを務める。しかし、それも29話までで、後半は平成ライダーで多くのプロデューサーを務めた白倉 伸一郎に引き継がれている。クウガが好きなのでとりあえず髙寺成紀がプロデューサーを務めた29話まで観た感想を述べる。先ずこの作品世間がイメージする仮面ライダーと全然違う。そもそも仮面ライダーって単語出てこなくて、それらは全て鬼と呼ばれて、その鬼になれる猛士って人たちが全国にいて仕事として魔化魍って化物を退治しているのだ。細川茂樹演じる響鬼もその鬼の一人で、従来の仮面ライダーが持つ、ある日突然超人的力を得てしまった悲劇のヒーローが自己犠牲の闘いに見を投じていくという形には当てはまらない。もう職業として割り切ってやってるから(勿論そこに正義感はあるのだけれど)そういった陰は全くない。特に二号ライダーの威吹鬼をやってる人なんかは本当に淡々とした調子で、電話してる姿なんか本当サラリーマンって感じ(これも作品にとっての猛士という存在を端的に表す狙いがあっての配役だろう)。しかも、主人公は響鬼ではなく、安達明日夢という(開始時)中学三年生の少年。この少年は鬼になる為に修行してるというわけでもなく本当普通の男の子。てゆーかヒーロー物の主人公としては普通以下と言っていいくらいで、本屋で万引きを目撃した際などは、何にも出来なかった自分に一日中凹んでるくらいナイーブな少年。この少年が法事で訪れた屋久島の森で響鬼と出会ってから、猛士という人達の存在を知り触れ合い物語は進んでいく。その内容は朝ドラライダーと喩えられるくらいほのぼのとしていて、脱仮面ライダーを狙った作品だけあって仮面ライダー作品の中で一際異彩を放っている。初めはその特異な世界観に面食らったが、猛士という設定、敵の童子と姫が創り出す日本昔ばなし的な世界観が魅力的で直ぐに引き込まれた。しかし、なんと言っても魅力的なのはひとみちゃんとあきらというダブルJC(4話からJK)ヒロイン。正直女の子って15、6歳が一番可愛いよね。主人公にデレデレでヒロイン気質のひとみちゃんと初めはツンツンしてたが徐々に心を開いてくれる真面目系鬼見習いのあきら。もうこの二人が可愛すぎてたまらん、ずっと観てられます。とは言ったものの当の主人公明日夢は30話近く話が進んでも物語的に何ら進展がなく若干苛つくというか飽きてくる。30話以降のプロデューサー変更と路線変更について、片岡力(誰?)は、『クウガ』のころと違って髙寺の中には番組作りを通じて表現したいことがもはや残っておらず、はじめから作品を貫徹できるテーマを持ち得なかったと推論している(wiki抜粋)…とのことらしい。明日夢の扱いから察するにその通りであったのではないかなと思う。しかし最後の29話はめっちゃ良くてキャンプで響鬼明日夢に語る言葉の一つ一つが凄く心に沁みた。30話以降は良くも悪くも普通の仮面ライダーになるらしく、脚本も 井上敏樹になるので響鬼のほのぼのとした世界観から一転ドロドロとした人間ドラマが始まるのかと思うとあまり見る気がしない。

仮面ライダーアギト(2001-02)

平成二作目のライダー。監督は色んな人がかけもつが、脚本は28話を除いで井上敏樹がすべて務めている。ミステリー要素が強く、アギト、ギルス、G3の三人のライダーの視点で物語は交錯し、序盤は謎が深まる一方だが、終わってみれば何にも分からない最初が一番面白かった。終盤翔一の正体が周りにバレた辺りから本当つまらん。クウガでは登場人物がみんな良い奴ばっかりだったのに対し、ムカつくキャラが増え、食べ物を粗末にするなど微妙に嫌な描写が目立ち印象が悪い。マナちゃんの部活のシーンとか本当胸悪いだけの糞。マナちゃんが超能力に目覚めてからも不真面目なボケをかまし無神経な態度を示す面々には心底引かされて、作品への熱もだいぶ冷めた。その分、ライダー三人はカッコいいのでそれを見守るだけで序盤は楽しい。特にギルスは俺の求める哀しみを背負ったライダーの最高傑作だと思う(ギルス演じる友井雄亮はパンクファッションで叫びまくる姿は町田康を彷彿させる)。一方、主人公である津上翔一というキャラにはあまり魅力を感じない。闘いを飄々とこなせる彼にはヒーローの悲哀といった部分を感じない(変身してからのギャップはカッコいいけど)。多分、僕は井上敏樹主導の仮面ライダーが好きではない。ヒーローは斯くあるべき、こういうヒーローを子供達に見て欲しいといった目的意識がなくて、ただストーリーが面白ければそれでいいという、ただのエンターテイメントとして作品が扱われてる気がする。しかし、19話でのライダーが出てこないでずっと推理してるエピソードはやっぱり凄い。そっから一気に北條を好きになるからそこは脚本の力なのかなと思う。でも僕は仮面ライダーにそういう人間ドラマとか求めてない。僕が見たいのは絶対的な力を持ってしまった一人のヒーローの自己犠牲の物語なのだ。それだけで50話も面白さを維持するのは難しいだろうけど、そういう作品でないと観る価値が見いだせない。そういう意味ではやはりクウガが僕の理想の仮面ライダーだったのかなと思った。

仮面ライダーブラックRX(1988-1989)

ブラックが面白くなくてあまり期待してなかったんだが、OPテーマがめっちゃカッコよくて期待感高まる。最初、南光太郎がブラックと同一人物と思えなかった。雰囲気が違うというのもあるけど、あれだけ戦って平和にしたのに何でカスミさんやキョウコちゃんといっしょにいないんだろうということを疑問に感じたからだ。争いに巻き込みたくないというなら何故、新しい女といっしょにいるんだ?…そんな状況が上手く飲み込めなかった。それはもう理由なんてないから受け容れるしかないんだけど、もうちょっとブラックで築いた下地を生かしてくれたら良かったのに。全体的にコメディータッチになっているが、倉田てつをに明るいキャラは似合わない。それに比べ、15話で始めてロボライダーに変身した時の自分の無力さに対する怒りと哀しみの叫びは痺れた。やはり南光太郎は哀しみを背負った正義のヒーローというのが望ましい。普段明るく振る舞っているのは、ゴルゴムとの闘いで家族を失ったことがトラウマになっていて努めてそうしてると妄想すると楽しい。そのような気配もあるんだが、そこまで突っ込んで言及されてないので作品の評価を上げる要因にはならない。ストーリーはそんな感じで適当なんだけど、戦闘は派手になったし、ライダーのフォームも3つに増えて楽しい。敵のデザインも、ダンガイオーとかその辺の80年代アニメのロボットみたいでカッコいい。しかし、最後先輩ライダー勢揃いしたのが残念だったな。そんな子供騙しに走らずその作品のキャラだけで解決してほしかった。