The Pastels - Mobile Safari(1995)


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最近自分の中でネオアコギターポップ再評価の流れが来ている。というのも最近激情ハードコアばかり聴いていたので激しくストイックな音に疲れた耳をそれらの音楽で癒そうという狙いから始まった(音楽の疲れを音楽で癒やそうとする発想がオタクだよなぁ…)。パステルズは高校の頃なんとなく聴いていたが、初期の辺りのメロディが良くて好んで聴いていたと思う。しかし、今聴くと初期はギターがノイジー過ぎドラムもスコスコ抜けが良過ぎインフレした80年代の音でダサいなぁ…と思った。本作は89年に出した2nd以来、6年ぶりの3rd。音はすっかり落ち着きパステルズの緩いだけではなくギリギリのバランスで保たれた特異なグルーヴだけが残った素晴らしい内容となっている。グルーヴというとレッド・ツェッペリンZAZEN BOYSといったストイシズムの上に成り立つ手に汗握る緊張感を思い浮かべてしまうが、こういうなぁなぁな感じで集まり、互いに譲り合い支え合うことで成り立つ居心地の良さもグルーヴなんだよなぁとパステルズを聴くと思い知られされる。意外とギターがカッコよく一曲目のギターソロではニール・ヤングやロバート・クワイン的な電気ビリビリギターを聴かせてくれるし、yogaの右側で微妙に聴こえる効果音的なギター(?)もセンスを感じる。7曲目や10曲目のような少し挑戦的な曲調もあり飽きさせることが無い。ラストの曲ではブラスも入り、彼らのゆったりしたグルーヴを遺憾なく発揮した新境地を見せてくれる。全12曲38分と尺的にも聴きやすく纏まった完璧なアルバム。

宮崎駿 - 風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡(2002)

90年〜01年にかけて5度行われたインタビュー集。聞き手は音楽評論家の渋谷陽一

 

先ず、インタビューというのは会話だから半分は聞き手によって作り出されるもので、聞き手がどのような人物であるかも非常に重要。この人の場合、相手に対して必要以上にフランクで挑発的とも言える語り口で兎に角しつこくてウザい。その辺はAmazonのレビューでも批判的に書かれていたことだが、しかし、逆にこれだけ宮崎駿に対してガツガツ行ける人も珍しいだろう。この人でなくては「宮沢賢治もオナニーしたと思う〜」とか、しょうもない台詞引き出せなかったと思う(笑)そういう下世話な所がロックライターらしくてこの本の良いところ。

印象に残ったのは「ナウシカは人殺しをする、罪を背負っていける少女だから描く価値がある〜汚れがないから美しいってそんな価値観はくだらないじゃないですか」というところ。(いや、もっとあったと思うけどへぇ〜面白いくらいのもので、僕が特に気になったのはこの宮崎駿の女性観…いや、性癖に関わる部分。)これは簡単に言って処女厨批判。尤もだと思う。しかし、宮崎駿の場合それだけに留まらない業の深さを感じる。例えばナウシカもののけ姫のサンといった争いの中で生きる気高いヒロイン達、彼女らの劇中での描写は悲惨で、全身を無数の虫の触手に撫で回されたり、体中から呪いのミミズが生えてきたり(あと千尋の腐れ神とかね)と、普通の少女なら心に傷を負って一生立ち直れないレベルの出来事に彼女らは見舞われる。…正直ドン引きである。これを観た視聴者はもう彼女らを萌えの対象として見ることはできないだろう。しかしそんな中、宮崎自身だけが「俺はそんなん全然平気だぜ?」とうい態度でピンピンしてる。彼はドン引きの変態行為をヒロインに加えオタク共を寄り付けなくし、自分だけが愛でられる最高のヒロインを映画の中で作り出しているのだ。しかも、その上でやっぱりジブリヒロインはみんな処女なんだ!なんと業の深いこと!!僕がずっと感じていたジブリの気持ち悪さの正体ってこれだったんだと納得した瞬間であった。

 

この本でも語られたが手塚治虫そして宮崎駿。この二人僕は正直苦手である(勿論好きな作品はあるし偉大だと思うけれど)。共通点は最高に業の深い気持ち悪いことをやっていて、それなのにポピュラリティを得ているということ。つまりは才能に対する嫉妬だろう。

ちなみに僕がジブリで一番好きなのはとなりのトトロで、サツキよりメイ派です。

やかまし村のこどたち(1986)


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ラッセ・ハルストレム監督作。アストリッド・リンドグレーンの児童文学を原作とした1986年公開のスウェーデン映画である。 やかまし村とかいうを子供を持つ親に媚びたようなタイトルは気に入らなかったが内容は良さそうだった。牧歌的ていうより牧歌そのものって感じ。子供達が可愛い。服装が可愛いので、余計かわいい。ストーリーは特になし。やかまし村の子どもたちが夏休みに遊ぶだけ。その夏は忘れられない夏になった…とかそういうのじゃなく普通の夏。だから感動なし。ひたすら癒やし系。退屈と言えば退屈かな。 魅力的なのはスウェーデンの田舎の美しい風景。

Portia fading - Wrecked Down Castle(2018)


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東京で活動する四人組ロックバンド、ポーシャ・フェイディングの2ndアルバム。1stの頃から独特なコード進行に磨きがかかりバラエティに富んだ内容となっており、最早エモとかポストロックとかジャンルでくくれる音楽性ではない。真の意味でオルタナティブロックと表現すべきかな。特にBoo'ya moon ticという曲はそれが顕著でエキゾチックっという表現がピッタリな異国情緒漂う佳曲。こんなの普通のロックファンが作り出せるセンスじゃないよなぁ。インドで修行とかしてそう(笑)そうした自由な感性をロックバンドという一種の箱庭的な感覚で繋ぎ止めることで発揮されるミニマルさがこのバンドの特徴かなと思う。病みつきになるような中毒性というのではなく、もっとこう掴み所のない流動的な…でもロックとしての確かな魅力も備えていて何度聴いても飽きない、そんな不思議な音楽。この文章を読んで聴きたくなる人がいるのか甚だ疑問ですが(笑)ロックが好きで新鮮な音楽を求めてる人には普通にオススメです。

激情ハードコアを色々聴いてました。

最近また以前のように音楽を沢山聞いて過ごしていました。興味の対象は激情ハードコアというジャンルのバンドです。海外ではエモバイオレンスと称され、日本では激情ハードコアと呼ばれることが多いです。興味の発端は日本のバンドthe cabsにあります。彼らは僕が音楽で久しぶりにヤバイと思ったバンドで、彼等のルーツが知りたくてギターの高橋國光氏のブログを読み漁っていたら、彼が海外のかなりディープなハードコアバンドに影響を受けてる事が知れました。もうロックはだいたい聴き尽くしただろと思ってたので、まだこんなにも未知のバンドがいたのかと驚かされました。この感覚は10代の頃、同じ様にART-SCHOOL木下理樹氏のブログで知った海外オルタナインディーバンドを聴き漁ってた時以来のものでとてもワクワクしました。そこで度々見かけたのがraeinやla quieteといったバンドでした。最初聴いた時は、確かにキャブスのルーツをそこに見つけられ興奮しましたが、キャブスのようにポップに落とし込んだところのない血生臭いドロドロのハードコアって感じに引いてしまいました。暫くして自分の中でまた音楽聴きたい欲がムラムラ湧き上がってきた時、激情ハードコアというものを真剣に聴いてみようと思いました。

 

一言で激情ハードコアと言っても無数にバンドはいますので、気になった有名どころ(僕調べ)10組に絞って聴いてみました。

Sed Non Satiataフランス

Daitro フランス

Yaphet kotto アメリ

Raeinイタリア

orchidアメリ

Mihai  Edrich フランス

Louise cyphre ドイツ

Amada woodward フランス

Shikari オランダ

Suis la lune スウェーデン

以上のバンドの出身地、フランス、イタリア、オランダ、スウェーデン、ドイツと激情ハードコアはヨーロッパに集中していることが分かりますね。同じヨーロッパでロック大国イギリスからはそれが現れておらず、激情ハードコアはロックと言えばイギリスという常識に対する近隣諸国からのパンクスピリットの表れだと考えられる。その為かバンドの殆どが英語ではなく母国語で歌っています。バンド名も全然読めない(笑)しかし、それが激情ハードコアが新鮮に響くポイントになっています。調べていて思ったのですがハードコアバンドの名前って俳優や歴史の偉人などの人名から取った物が多いですね。キャブスのチャールズブロソンの為にという曲もチャールズブロンソンというハードコアバンドからきていてハードコアバンドらしいマナーといったものを感じます。後、I Wrote Haikus About Cannibalism In Your Yearbook みたいなクソ長い文章そのままみたいなのも有りがちです(このバンド名はキャブスhaiku about kdylaの元ネタなのかもしれません)。

激情ハードコアの音楽的特徴として、ハードコアの性急さにエモの叙情性が加わったと言う感じで、ハードコアは音楽性は抜きにして政治的なメッセージが込められた堅苦しいノリが苦手でエモはアルペジオの溜めがかったるくて苦手という自分にとって、激情ハードコアは一つ理想的な形と言えます。

Raein

https://youtu.be/ciR4oMW3eY4

激情ハードコアと言えばこのバンドというぐらい人気があります。このバンドで一番好きな曲。イントロからいきなり印象的で感情を煽り立てるようなドラムとギター、このギターワークは唯一無二。これだけ展開が詰め込まれていて1分ちょいしかないというのも鮮烈でした。

 

Sed Non Satiata

https://youtu.be/QhJLRhnfSGg

うねりのあるギターがかっこいい、エンジンダウンっぽくもある。このバンドは勢いで突っ切る感じはあまりなくて、しっかり溜めてサビで爆発する正統派。溜めの最中も留まるのではなく感情を抑えつけてる感じが激情ハードコア以外の何者でもない。激情ハードコアのど真ん中を行くバンド。

 

Amanda Woodward

https://youtu.be/Rk9AOx9tn7c

このバンドは疾走感があって印象的なギターリフが多く聴きやすい。フーファイターズっぽくもあるのがアングラな激情シーンで異彩を放ってます。

 

Yaphet Kotto

https://youtu.be/yLjnCxnFaQ8

このバンドは評価が高いようだが、僕には平凡なエモに聴こえる。

 

Daitro

https://youtu.be/tbRa3lfG30g

このバンドも非常に評価が高いですね。slintとかのポストロックと同じ硬質な雰囲気がします。カッコいいはカッコいいんだけど、こういうコード進行にメロディアスさがないバンドはちょっと苦手。

 

Mihai Edrisch

https://youtu.be/qT6VMNB4oe8

これは素晴らしい。このバンドはドラムが全体を支配してる感じがします。よく練習されていて、とても真面目な印象を受けます(てゆーかフランス真面目なバンド多くない?)マークスチュワート系のボーカルも印象的。何故かこのボーカルの発音はたまに日本語に聴こえる(笑)。

 

Orchid

https://youtu.be/w9nMr9HmXHM

ハードコアから激情ハードコアに移り変わる瞬間を捉えたバンドで他のバンドと比べてハードコア色が強い。これに関わらずだけど黎明期の真っ只中なものって僕はあんまり好きではない。

 

Suis la lune

https://youtu.be/fQ-KGl-u7bU

raeinに次いで人気があるんじゃないかなぁ。美しいアルペジオが特徴でギターセンスが凄まじい。しかし、いまいちリズムが弱いというか、のれない。惜しいバンドです。

 

Lousie cypher

https://youtu.be/Xk6OkyKpO5I

曲間でしょっちゅう映画かなんかの音声が引用されるのが特徴。そのせいかなんか逃避的でナイーブな印象を受け、激情ハードコアで一番シンパシーを感じたバンドです。勿論音楽自体も混沌としていてキチガイ感あって最高です。曲がめっちゃ短いのも良い。

 

Shikari

https://youtu.be/Ip_E3GNtvpo

このバンドを初めて聞いた時こんなバンドを探してた!という気持ちになった。激情ハードコアってグラインドコアと混同されがちなジャンルだけど、この中だと一番メタル要素あるかなぁ。どうしようもない閉塞感に満ちた陰鬱な感情を解き放つそういうある種の人間にとって救いとなる音楽です。最強にかっちょいい。

 

やはり同じジャンルに該当するバンドでもかなり好みが分かれるもので、僕の場合、激情の中でもあまりエモやハードコア色が強いバンドは好まず、もう少しカオスティックに展開していく物が好みだということが分かった(更に曲が短いと尚良し)。カオスティックハードコアっていうのもあるけどそれとはまた少しちがうんだよな。あっちはなんか半分ダサいミクスチャーロックって印象がある。カオスティック寄りの激情が理想だな。

Portia fading - breath flows caressing a lips pour savliva(2014)

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portia fading(ポーシャ・フェイディング)は東京で活動する四人組ロックバンド。その1stアルバム。彼らの音楽は一言で言えば、モグワイとかの静と動を行き来する轟音ポストロックに歌が乗ったものだが、そう言われるとよくあるオルタナティブロックをイメージされるかもしれない。しかし、彼らの音楽はオルタナティブロックとはあまり結びつかない。オルタナってのはざっくばらんに言えば歌謡曲とパンクロックの融合であると僕は定義しているのだが、彼等の場合バンドが歌を歌うための伴奏ではなくコードとメロディが美しく融和している。それはオルタナというよりもっと遡り、パンクの時代に袂を分けたハードコアパンク(パンクの直線的な演奏を追求したもので緩急がなく歌の伴奏という発想がなくて全部シャウトで乗り切る硬派な音楽w)、そこから派生したポストハードコア、エモとかそういうバンドに近く、彼らの曲はコード進行とメロディがどちらに振れるでもなく同じ比重で同時に行われる。このジャンルのバンドは殆どが歌が下手でなんぼというか、その逃げ口上の為に用意されたようなジャンル(ていうのは言い過ぎ)で、例外を挙げればsunnyday real estate。このバンドにしてもオルタナよりのエモなので、portia fadingのような音楽性は更に特殊。これが可能なのはボーカルの高音域で美しく伸びる声質と彼らが日本語詩ではなく英詩によるスムーズな歌唱を選んだからではないかと思う(さっき挙げたsunnyday real estateも同じタイプの声質の持ち主である)。ハードコアの全てをねじ伏せるようなシャウト歌唱も好きだが、こういう演奏に埋もれず美しいメロディを奏でるタイプのボーカルが一番好きだ。このタイプで僕が好きなボーカルはSunnyday real estate、Mercury Rev(2代目)、日本で言えばUrema等がいる。Uremaは2016年に解散してしまったのでファンの人は聴いてみてはいかがでしょうか。

シテール島への船出 (1984)


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テオ・アンゲロプロス監督作。相変わらずの説明不足っぷりと、特に客の気を引くつもりもない淡々とした展開で、ぼーっとしてると水のように流れていきもうそこにはない…。興味のない人にはあらすじすら理解されず終わる映画だろう。しかし、注目して観れば幾らでも発見がある。そういう押し付けがましさのない深みがあるのがこの監督の作品の良いところ。監督は独特な視点を持っていて、殆どがロングショットで画面の切り替えを極力しない超長回し、役者の演技を捉えるというより、人間がぞろぞろ集まって離れていく、そうした推移を眺めているのが好きなんだろうな。役者の演技よりも、そうした人間が起こす団体の行動からその状況や人々の心理を読み取るのがこの監督の映画の醍醐味である。それは面白いんだけど結構面倒くさい事でもあり、この監督の映画を観ているとどうしても一時間くらいで眠くなる。だがそこでパソコンで見ていた場合、二窓にして別の作業を始めたりするのはいけない。淡々としながらも変化の激しい繊細な作品なので直ぐに内容を見失う。退屈なようで常に映像にはなにか仕掛けられていてそれを読み取る努力でギリギリ寝ずに済む。このとても微妙なバランスはこの監督しか持っていない唯一無二の世界。そして常に考えられた美しい構図。自然。建造物。それしか映っていないスキのなさ。…どうやって作っているんだろうと思う。まさか老人が海の上に傘を指して立っている画から想像していったりするのだろうか。この人の作品は一回見てダメでも再チャレンジすれば、結局どれも同じくらいの評価に落ち着きます。そうならなかった時は自分の観察が足りなかったのだと…(笑)。