榛野なな恵 - 卒業式 (1996)

ブックオフで偶然手に取った一冊。雰囲気でピンときて購入。短編集らしいがタイトルにもなっている卒業式という作品が傑作だった。学生時代に感じる同調圧力やつまらんノリそういった物に対する違和感それに迎合する奴らへの苛立ち。そういったものがこの短編全体を通すテーマだと思うのだが、この作品が秀逸なのはそれが主人公の住む町全体を権力で支配する鬼島一族という奴らによってもたらされたものであって誰しもが抱くモヤモヤした感情の原因を明確な敵として用意したところであると俺は思う。ともすればこういったリアルな問題を取り扱う作品には地味ななんの力もないキャラが主人公にされがちだけど、この主人公はとても賢く個性的で面白い。最後に収録されている野茨姫の「私はお姉ちゃんみたいに賢くないけれど、お姉ちゃんには見えなかったものを見つけることだってできるかもしれない」という独白に強い希望をかんじた。