読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

北杜夫 - 幽霊(1956)

★★★★★
主人公の追憶を語る本なのだけれど、好きな本で何度か読んだけど一度も最後まで読んだことは無かったので今回ちゃんと読み切ろうと思って読み始めたのだが、最後の方になって「あれ?この本最後まで読んでるわ」と気づき、何か本の内容とリンクしてるなぁと不思議な気持ちになったのだが、これは単に忘れていたのではく覚えてなかっただけである。丹念に描かれた大人になるにつれ忘れていってしまう子供の頃の感覚がノスタルジックで非常に切ない。好きな女の子が出来ても何にもできず、そういう想い出が折り重なって理想の女の子の虚像を作り出しそのような子に出会えるかもしれないという事を頼りに生きていく事を決めるという全くもって寂しすぎる話だが、美少女フィギュアの原型師宮川武氏が「持て囃されるべきは作品ではなく作者自身であって、作品は作者の中にだけあるオリジナルのコピーに過ぎない」と話していた事を思い出し、なる程本当に美しいものは自身の中に宿っていて現実はそれらを映し出すための歪んだ鏡に過ぎないのだ、とかそんなことを思った。