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福永武彦 - 草の花(1967)

バーガーナッズの草の花という曲がこの本に由来していることを知り読んだ。風景描写をイメージするのが苦手な僕には、この本は台詞ばっかりで読みやすかった。前半は爽やかなBLラブコメ(コメはないか…)に過ぎないのだが、後半のディープなこの本のテーマである孤独と愛に纏わる物語が心に突き刺さりまくって僕は暫く本なんて読みたくない気持ちです。ただ理屈抜きに愛し合い馬鹿で呑気な幸せに浸ればいいじゃないか。それが一番幸せだし、誰も傷つかない。それをばこの汐見とかいう男は何かにつけて理屈を捏ねてその幸せのみすみす手放すのだから馬鹿としか思えない。と、思いながら、そうした性質が自分にも大いに見受けられることに僕は慄然とさせられた。例えば中学までは女の子と言葉を交わすなんてことは羞恥以外の何者でもなかったのに、高校生になった途端軟弱な事が当たり前になる風潮に僕は納得出来なかった。なんにも知らないこんなちっぽけな学生風情が何故そんなに愚かな交渉に及べるのか不思議でならなかった。しかし、それはただの臆病な弱気に過ぎず、この男もハードボイルドでダンディな孤独を気取っていても結局臆病な弱虫に過ぎないのだ。それがこの男の中だけで終わることならばそれでいいが、一人の女性の心にその臆病の為に終生癒えない傷を負わせたのだからその罪を許すこと出来ない。しかし、ここ三冊連続でホモ描写のある小説を見せられて、戦前は寧ろそうした偏見が薄かっのだなぁと感嘆。インドなんかは自由恋愛が認められておらず結婚相手は親が決めるので同性同士ベタベタとスキンシップが多いらしいが、日本も結婚に関して志賀直哉の暗夜行路でそれに近いものが認められたしそれと一緒なのかなぁ。そういう性の抑圧から矛先が同性の可愛らしい後輩に向けられるのはまぁ分かるが、それとホモセクシャルは違うって認識なんだろうなぁ。つまり、世の中楽しんだもんがちって事ですな。