大江健三郎 - 性的人間(1963)

3つの短編からなる短編集。性的人間は全2章からなる短編だが、第1章は反社会的な奴らによるかまいたちの夜って感じで、これがサウンドノベルかなんかだったらニコニコ動画に上がってネタにされそうな親しみづらいキャラクターが滑稽だが、第2章がやばい。痴漢の事を「厳粛な綱渡り」と称す、変態紳士ではなく変態詩人たちの友情は笑えて心が震える。コイツらには良心とか道徳ってものが全くないのかと呆れさせられた後にこの裏切りである。ストーリー展開も完璧だった。残念なのはこれがあくまで小説で少年の体験的な嵐のような詩ではないこと(笑)
セブンティーンはオナニー大好きの17歳の少年が、自分のオナニー癖は外行く人全てにバレているのではないかという猜疑心からくる恥辱から右翼になって解き放たれる話。この短編に出てくる猫のギャングに対する批評が大江健三郎の小説をよくあらわしているように思われたそれは「あいつは野蛮で、悪の権化で、恩知らず恥知らずで、爆発的で、独り狼で、何者もは信頼せず、自分の欲しいものだけを掠め取る、それでいてあいつは俺に尊敬の念を起こさせるほど堂々としており…」というもの。
共同生活、これは読んでいてしんどかった。台詞もほとんどないし、主人公は四方を猿に囲まれた部屋で監視されながら暮らすのだが、その状況について何ら説明がなされず、主人公の病んだ精神の吐露だけが文章を紡ぎこっちが滅入ってくる。最後急に状況が覆って医者に強迫神経症と診断され腑に落ちない感じで終わる。そんな事は何となく読者は察しているので、いっそ外部からの視点は入れず主人公の精神世界の中だけで終わってほしかった。