木霊 - 北杜夫(1975)

幽霊の続編で前作の孤独な状況から一変、倫子というあからさまな萌えキャラが登場して驚いた。ただ彼女も回想に登場するだけで主人公の前に直接現れることはなかったので彼の孤独という体裁もギリギリ守られたと言える。本編でこれだけトーマス・マンを推されたら読まなければならないのかなと思う。北杜夫はまるで今見てるかの様に風景を描写するので僕はどうにかそれをイメージしようと頑張ったが、全く見たことない物はイメージできないと悟り、すごく今更だが流し読みという術を身につけた。これでいいと思う。またいつか読み返した時に理解できればという楽しみが増えるし、無理に調べたり画像検索している内に失われていく文章のリズムみたいなのがあるんじゃないかと。全四部構成になると述べられるこのシリーズは残念ながらここで途切れているが、幽霊から随分時間を置いた上にさびしい王様シリーズ他、を間に挟みながら進められた訳だが、どこかで北杜夫氏は死ぬ前に書いておきたい物が幾つかあると語っていたがそういう明確な意志による所産であることは明らかで、その創作意欲に非生産的な日々を送る僕は羨望の内に打ちのめされた。