大江健三郎「個人的な体験」

この小説が全くの創作なら素直に楽しむ事ができたのだが、作者が実際に抱いた感情が描かれているのかと思うと嫌な気持ちがして入り込めなかった。誰しも現実にのしかかる責任から逃れ想像力を羽ばたかせたいという欲求があると思うが、(作者は否定しているが)私小説となると僕みたいな小心者はやはり責任の重みを感じずには要られない。とは言えこれは僕の問題で、内容に関しては普通の作家なら頭に異常を持って生まれた子供を愛せるのかという所をテーマに持ってくるところだと思うのだが、この本には愛という単語が一つも出てこずタイトル通り個人的な体験として描かれている。そこはやっぱり作者の特異なところですごいと思う。