雨の花束 - 雨の花束(2017)


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2016年ボーカルの死去によって終わりを迎えた東京のバンド「雨の花束」の3年間の活動で発表した曲すべて集めたアルバム。天才肌のフロントマンとそれを支える超絶技巧のメンバーが揃った凄まじいポテンシャルを持ったバンド。ここに収められた曲は全てそんな才能をオブラートに包まずそのまま剥き出しで差し出された表現だ。メロディは良いし、ハイトーンのボーカルも美しい。アレンジ面ではHaKUなんかに近い、あの手この手でリスナーを楽しませるきらびやかなものになっている。なのに何故こんなにも歪で毒々しいのだろう。構成や歌詞が難解なのはあるが、それだけではない。表現としての純度が非常に高いのだ。曲がカッコいいとか綺麗だとか表面的な印象は受け取ることができるが、僕にはこの曲達が何を意味しているのかが全然わからない。優しい歌なのか厳しい歌なのか、叫んでいても怒っているからか悲しんでいるからか解らない。この人、最後まで誰にも理解されず孤独だったんだろうなぁ(妄想だけど…) 。しかし、僕にとってはこうした謎は最高のおもちゃになる。表現の純度が高いほどその謎は面白い。尾崎豊がステージで黙って中空を眺めている間、何を考えてるのかとかね。最高の芸術だと思う。収録曲は発表順に並べただけだけど、いきなりシャウト気味の歌でインパクトがあるシグナルから始まり、最もポップなソラチルアウトが真ん中にあって、生活感のある歌詞が印象的なマルティンで終わりアルバムとしての流れが非常に良い。また何度も聴くうちに新しい感想がどんどん生まれてくると思う。

2/8追記、君を守る言葉たちって曲がかなりエグいことに気付いた。争いの上に成り立つ平和に対する矛盾が歌われており、それは単なる反戦ソングではなく、一兵士の私怨に始まり、人道に悖る行為に及んだ兵士が家族で食卓を囲むという平穏に帰るまでが細かく描写されており、その矛盾が歌声と共に尋常でないリアリティを持って襲ってくるという恐ろしい歌だ。この曲によってボーカルの声に宿る悲壮感、嫌悪感、焦燥感といったものの一端を垣間見ることができた気がする。