高野文子 ー ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事(1987)

高野文子5冊目となる単行本。やっぱ天才。この自由自在の視点と細部までよく構築された空間。話もよくできてる(内容は小粋な映画っぽい雰囲気で年に1回は見たくなるなるようなやつ)。本当どうやってここまでデッサンみたく細かい描写が描けるのか謎、ため息が出る。今作は特に光と影の表現、その凝り方がヤバい。シンプルなトーンとベタなんだけどそれが潔く自然でオシャレで可愛い、漫画における色彩感覚がずば抜けてる。ふざけてるかと思えば演出だけでシリアスにカッ飛べるその技量も圧巻。そして、舞台となるデパートは本当によくデザインされており、まるで建築デザイナーの制作意図まで汲み取れるようで、何度でも繰り返し読みたくなる箱庭を作り出すことに成功している。……その代わり個性的なキャラクターデザインが出てこないのが高野文子の弱点であるのかな。あけすけに言えば、ありきたりな物の寄せ集めで(その描写の深さがすごいんだけど)新しい物をデザインする事ができていないと思った。まぁそれだけが漫画じゃないけどねぇ。