テツコ - 愛してる(2019)


f:id:simenawa2000:20191121160419j:image
日本のガールズバンド"テツコ"の4枚目くらいのアルバム。前作エロスはスランプでなかなか曲ができなかったらしいけど、最近なんか吹っ切れてのりにのってる状態のテツコ。前作まではどっか取り繕ったというか型にハマったようなとこがあったんだが、本作は音も言葉もメロディーも剥き出しでちょっとドギマギしてしまうほどです。" これが自分だ "というような開き直りを感じ、そしてその美しさに涙ちょちょぎれそう。テツコには天才のバイオリズムを感じる。ジョナサンリッチマンとかその辺のあれ。人の心臓にサラッと触れて抜き取るようなあの種のテクニック。

ほんとスタジオで併せたそのまんまみたいな何の飾り気もない音でギターがこんなにぶっ飛んでて良いのかと(興奮)。ノイジーなギターはフラットな状態で聞かされるからこそノイズになりえるんだと、ノイズギターやってる人達は見本にして欲しい。結局マッドハニーとかライブが一番かっこいいもんなあ。ということで音はめちゃくちゃカッコイイ。本作聴いたあとに、自主制作のテツコの哲学ってアルバム聴き返してみたらミックスが悪く聴きづらかった。あのアルバムはこのアルバムと対極にあるな。言葉も曲も作り込んでいて気合入ってるんだけど、こういうのが良いんでしょ?って感じが態とらしくて自分はダメだった。でもやっぱ音かな、好きな曲もいっぱいあるしリマスターとか再録してくれてもいいのよ。

本作に話を戻すが曲は全部いい。高速パンクチューンでキラーチューンとなる"愛してる"に始まり、イントロから名曲感溢れる"わたしのBABY"。ボーカルがなんか語り始めたら名曲って感じあるよね(ラルクの虹とか…)。「狂ってなんかいないよ」ってメッセージに共感。こんなに真っ直ぐ生きて、いけないようなかんじのする世の中だもの。この感覚を持つ人だからこそ鳴らせるアウトロのノイズギター。最早ワンコーラスでサビが"ライラライ"だけの曲およそ1分。そこに詰まった彼女ら独自のバンド感。ロックなんてこれで十分なんだよという開き直り。これが彼女らのスタンダード。ポップな"パーフェクトエンゼル"。エンジェルじゃなくてエンゼルなのが味噌。エンゼルパイを思い出す。チョコパイよりエンゼルパイの方が好きって人は正直でいい人だと思う。2番のヴァース、ギターの残響と歌とドラムだけなんだぜ?しかもまた1分台、この隙間は確信に充ちてる。続く曲は"ライラライラ"さっきと併せて冗談みたいなタイトルでまたサビがライラライラ言ってるだけ。挑発的ですらある。曲が中断されそして始まるギターソロは若干プリンスっぽい。テツコのセクシーでサイケな一面が覗く。そんで次の曲は"あいしてる"それ一曲目と同じタイトルやん(!!)ひらがなにしただけやし。売る気ないのかしら。レコードで言えば丁度B面の頭に配置されてて1曲目と打って変わって穏やかな曲調。愛の二面性を歌ってる可能性が微レ存!?そして軽快なベースで忍び寄る"珊瑚で指輪"またワンコーラスでサビまでドラム無し、そして終盤加速する。こんな曲を作ったのは誰だァ?"天使in悪魔"アートスクールで聴いた事あるようなリフで牽引するアップチューン。バランスのいい曲なのでテツコのバンドサウンドを堪能しよう。"湿っぽい歌は嫌い"テツコの切ないメロディセンスが充分発揮されたミディアムナンバー。これがあるからテツコは安心して聞ける。耳をつんざくノイズギターで振り切るラストナンバー"おやすみ"。疾走感溢れる曲に乗せて、テツコの世界観が凝縮されたお馴染みのフレーズが散りばめられる。寂しさを濁し出すメロディー。泣かせにきてる。これは確信犯だな。そして2曲目のあの名曲感溢れるコーラスに回帰する…。「今夜はもう品切れだよ!帰んな!」と差し出された最後の1杯の水割りのようだ。…名盤っすね。5回連続で聴いてもずっと良いから間違いない。新曲いっぱい作ってるみたいだし次のアルバムも早く出してくれよなぁ。

このアルバムは全10曲、トータル僅か30分切るかそくらいだけど、パンクやハードコアのアルバムで30分切るくらいなのはザラだったりするが、「短くない?」と思っていた時期が俺にもありました。

そういう時は『2回聴けば良いんだよ』と言われ時は衝撃でした。その精神をテツコにも感じる。音楽に全てを委ねるような依存の関係ではなく、自分があって音楽もある。音楽は人生のすべてじゃなくて友達として傍にあって、必要なら聴けばいいし突き放してもくれる。そんな健康な関係ってあるんだって気付かせてくれた。