【クッキー☆ボイスドラマ】魔理沙とアリスの自己矛盾☆(2020)


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https://nico.ms/sm36353098 

これはガチですげえ… 。この動画は東方ボイスドラマ企画とかいう、ニコニコ動画で細々やってるしょーもないコンテンツから派生した作品の一部なんだけどこれがめちゃくちゃ面白い。東方も淫夢クッキー☆も知らねーよって人でも所謂セカイ系厨二病、哲学、エログロ、ナンセンス、庵野秀明丸尾末広今敏…等のキーワードにピンとくる人には是非オススメしたい。

 

クッキー☆がまず分からない人はこっから…】まずクッキー☆とは、視聴者参加型動画サイトニコニコ動画で一昔前、真夏の夜の淫夢と呼ばれるホモビデオがネタにされ爆発的に流行ってそのブームはニコニコ動画を飛び出してインターネット全体にまで影響を与えたという事実を知っているだろうか?そこに登場する語録はネットスラングとして定着して、今では知らず知らず淫夢語録を使っている人もいるほどだ。例を挙げると…

あっ・・・(察し)

あくしろよ

〜はっきり分かんだね

〜スギィ!

ファッ!?

まぁ多少はね?

とか…詳細はこちらhttps://dic.nicovideo.jp/t/a/%E6%B7%AB%E5%A4%A2%E8%AA%9E%E9%8C%B2%28coat%29まぁ、ネットやってたら1度くらい見た事あると思う。これもそうなの!?と驚く方が多いんじゃない?

その淫夢が爆発的に流行った頃、発信元であるニコニコ動画で時を同じくしてクッキー☆と呼ばれる東方(ネットでカルト的な人気を誇るなんか可愛いキャラクターがいっぱい出てくるシューティングゲーム、俺もよく知らん)の二次創作作品で、その東方のキャラを使った紙芝居形式の話に素人声優が声をつけた動画作品がクッキー☆である。https://youtu.be/rQv3nX4FR9k

これ自体は全然面白くないんだけど、下手な絵と演技がネタにされ、当時流行っていた淫夢ネタとセットで取り扱われ淫夢の盛り上がりを追い風にこれまたニコニコ動画内では爆発的に流行した(といってもクッキー☆に関してはニコニコ動画内だけの流行りで一般には浸透はしていないアングラなコンテンツだと言える)。そのクッキー☆をネタにした二次創作の二次創作がニコニコ動画内でライキングの上位に入ったりして1つのクッキー☆界隈というカルチャーとして浸透し今も人気があるのだ。この動画はそうしたちょっと複雑な背景を下敷きにした作品であるが予備知識なしでも、だいたいは楽しめると思うし、ここからクッキー☆淫夢について理解を深めていくのもいいだろう。

 

クッキー☆が分かる人はここから…】

自分はこの動画をhttps://youtu.be/e_tZk_b-ufc

YouTubeでたまたま観てこれは他のクッキー☆MADとはちょっとちゃうな、他にはない拘り偏執的な何かつまり「オリジナリティ」がある…って気がしてリンクを辿って見つけたのがこの自己矛盾という動画作者だった。この人の作品についてはまだこの2つしか観てないけどクッキー☆界隈には収まらないSWK is Godの人(この人の動画全部消えてるけどどうした?)に並ぶ鬼才だと感じた。

この作品のあらすじを説明すると、主人公はオリジナルの絵をネットに放流していたんどけど、全然人気が出なくてクッキー☆的な二次創作に手を汚し、人気を獲得していくんだけど、自分のオリジナリティって何かって創作者ならお馴染みの悩みにぶち当たり承認欲求と自己顕示欲との狭間で、創作って何かっていう疑問に真正面からぶつかっていくクッキー☆らしからぬ真面目で哲学的な話なんだけど、この作品が優れているのはその世界観で、二次創作の世界を現実とは違うもう一つの世界としてシュールでダークに具現化していて、そこで発される言葉はセンシティブでメタフィジカルであるが同時に幻想的でそれはまるで丸尾末広少女椿みたいな現実と妄想の狭間を行くエロでグロでナンセンスな内容を孕んでいる。 その世界は妄想であり現実であり暗喩的で直截的であるが故に色んな人に刺さるはずだ。

更にそんな異常な世界観の中でも登場するキャラクターの個性は守られるて、主人公は承認欲求に飢えていて利用されやすくその危うい性質は非常に性的で下半身にくるものがある。最初全然喋らんけど声優ありきの話やからどんな声なんやろってすげえ引き込まれるのはうまいなと思った。クッキー☆原理主義者の女の子も他者依存症的な雰囲気とレズっぽい性質を併せ持っていて可愛い。あと、説明役の三人娘が生意気で可愛い。犯したい。魔理沙役のアホっぽい演技がうまいというコメントも込みで楽しめる。やっぱ台詞がすげえ上手い。他のクッキー(笑)とは違う。また、クッキー☆に男キャラをぶち込むという暴挙にも出ていてそれがまた作品に男性という1つの社会性を付加する役割を果たしていて物語に深みを与えている。この動画のコメでAV業界みたいだなとかいうコメがあって的を得ているなと笑。まぁこの作品の場合、売るのは自分の肉体ではなく作品という名の自分の魂であるが、それ故に物語を肉体性でなく精神性に的を絞り、更に問題の核心に迫る事に成功している。

物語は進んでいくとクッキー☆作品がネタであると自覚して作品に臨む奴らが現れ…それが養殖と呼ばれそれを批判する原理主義者が現れ、内ゲバみたいな話になっていくんだけど。主人公はやがてどっちに着くのかって決断を迫られるんだが、主人公は二次創作そのものを否定しそれを主張するんだけど、それを行っているこの世界自体がクッキー☆というコンテンツに乗った二次創作であるという自己矛盾に陥るが、その叫び自体が物を作り出す瞬間のエネルギーそのものを表現していて、それが何に注がれようがそれそのものを賛美しているし同時に否定していて、作品自体が非常に高度な批評性を孕んでいるのだが…そんな事考える間もなくその光景にただ感動してしまったのだから自分の負けだった。この様にこの作品は賢い人なら幾らでも例え話ができる寓話的な要素が含まれているのだけれど、そんな脳みそがなくても感情で見れてしまうエモーショナルな所が素晴らしいと思う。それは自分の本当に言いたいことを作品に込めた結果だろう。

勿体ないのはこういう才能がクッキー☆なんかに埋もれている事だし、その才能がいちばん発揮されるのがクッキー☆であったという悲劇。その苦悩さえ皮肉を込めて作品に組み込まれているから凄い。