シベールの日曜日 - TSUBOUCHI(2013)


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日本のバンド、シベールの日曜日の4枚目のアルバム。八百屋の地下でドラム以外ほぼ1人で作ったというアルバム。今では海外ツアーを行うなど国内外ディープなファンを獲得しているバンドであるが、この頃はまだあまり世間に認知されておらず、バンドとしての体裁も保てないような状況でレコーディングも非常に苦労したらしい。アルバムの内容はビーチ・ボーイズのスマイル的なパラノイアックな雰囲気が渦巻いておりよく完成させたなというのが正直な感想。しかしそれが功を奏しここに収録された楽曲が全てがサイケデリックを突き詰めた名曲ばかりが並ぶ隠れた名盤となっている。

01.Medichine Man

印象的なリフを反復するクラウトロック形式の曲。抑揚を極力排した独特なボーカルスタイルはオタクが理詰めで何か語っているような何者も寄せつけない一方通行な狂気を感じる。歌詞の内容も意味不明でノリの良い音楽に乗せ何か刷り込みでもされているんじゃないかと思える宗教的なヤバさを感じる。インド音楽的なひたすらびよーんと伸びる音も含めサイケデリックの全てを詰め込んだようなサイケデリックロックをひっそりと更新した名曲だ。

02.R.U.I.N

シンプルなビートにひたすらリフを反復するギターとキーボードに乗せて、さっきと打って代わり消え入る様なボーカルがのる退廃的な楽曲。時々リードギターがブルージィなアーミープレイをかます。死にかけのドアーズといった感じ。

03.Marginal Man

パーカッシブな曲に対しリードがひたすら怪しいフレーズを弾いている。メロディーはロマンチックに展開するが、怪しい雰囲気は変わらず寧ろギターが壊れた様な音を出して歪さを増す。間奏のアコギが渋くギラつく。ラストでやっとドラムが目を覚ましロマンチックな雰囲気に加担するが時既に遅し悲壮感だけが膨らむ。

04.肉色の計算用紙(55 Ghost)

ジャズテイストの楽曲に対しディレイするボーカルが忍び寄る。ジャズっぽいエレピが濁し出す大人っぽい雰囲気をぶち壊す一曲目と同じ狂人スタイルのボーカルが乗りカオスを呈するシュールでプログレッシブな曲。コーラス部でサイケデリックに展開しピンクフロイドっぽくなってジャズに戻る構造が謎で面白い。

05.Working Days

アルバムで唯一明るい。牧歌的な雰囲気のある曲。もちろん根っから明るいわけなんてないんだけど、この曲がワーキングデイズなんて皮肉が効いている。歌詞も美しいメロディーに不釣り合いな物々しい雰囲気があり危なっかしい。

06.Sleeping Days

幽玄なアシッドフォーク。ニックドレイクとか好きな人なら泣いちゃうだろう。お化けみたいなコーラスが深遠な世界へと聴く者を誘う。

07.7 Mornings

リフが先行するかっこいいロックンロールナンバー。モロGS的なコミカルなコーラスがこれいつの時代の音楽だっけと頭の中を掻き乱す。ブルージィなリードにパーカッションなどサイケデリックな要素満点の名曲。歌詞カードにデカく踏み潰すと書いてあるのがインパクト大。この曲はどこかVシネ的な狂気がある。何だかよく分からないが凄まじい。

08.灰色の天使(死刑囚)

幽玄なアシッドフォークにパーカッションが加わり呪術的な様相。美しいメロディーに導かれ灰色の天使が降臨する。中盤のピアノが非常に神々しい。

09.Paradise Lost(inside O = Outside 0)

ギターリフを中心にジャムっている様な、このアルバムの組曲的な雰囲気もある曲。ボーカルはなにか訳の分からないことを呟いたり唸ったり笑い出したりしている。言葉の一つ一つは理解出来るものだが完全な独り言で、自分の中では意味が通ってるらしく頭のいい狂人が一番ヤバイというのを強く意識させられる。サイケデリックを体現し過ぎだ。

 

全体として…

日本のロックの歴史って2000年前半くらいで止まってるよね。所謂ロック名盤ガイド的なものってくるり中村一義ナンバーガールスーパーカー辺りで終わり。でもそれじゃ面白くない。俺としてはその後のアートスクールとかの方がよっぽど立派だと思うし、ピープルとかノーベンバーズとかオーガ辺りが載ってもいいと思うけど、なんとなく線の細い連中ばかりという感が否めんし骨太ロックを求めるインディーロック否定派の連中からは同意が得られないだろう。そうした後継者不在のまま突入した2010年代にそうしたシーンに反目する連中によって(?)アンダーグラウンドな自主制作に近い形でロックの名盤が多数リリースされているというのは隠された事実だ。それらは時代や流行りと切り離され、なんの法則性もなく参照も分かりづらい音楽で、興味を引くような見出しを付けカテゴライズする事は非常に難しく、それらが収録されたガイドブックなんて永遠に出ないだろう。だからこそ面白く取り上げる価値があると思う。俺は元々サイケが好きなんじゃ〜!!